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2022年6月26日(日) 西村賢太 『一私小説書きの日乗 憤怒の章』を読む

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   無頼派作家 西村賢太氏の日々の日常を綴った日記文学。何時に起きて、毎日、どのように行動したか、何を食べたかを記している。編集者との確執、自分の作品の映画化されたものへの酷評、いま何を書いているか、ビートたけし氏と軍団の皆様との飲み会の様子、テレビ放送出演の様子等、飾り気がない文章で綴られている。そして、驚くべきは、ほぼ毎日、大量のお酒を飲んでいることだ。まさに、無頼派作家の酒豪の日記だと言えるであろう。一見、ぶっきらぼうに見えるが、読み応えのある一冊。最後に面白い箇所を引用しておく。「軍団の無法松氏がやっておられる店に腰を据えられた氏は、率先して歌いまくり、そしてリクエストされるままに、ご自分の往年のヒットナンバーも歌って下さる。その姿を、いつの間にか加わっていた(寝ていたところを呼びだされて、急遽タクシーで駆けつけてきたとのご由)軍団のアル北郷氏がスマホで動画撮影し、タカ氏や博士氏はバックコーラスをつとめ、皆、心からご自分の“師匠“と同じ場にいる幸せを噛みしめておられるご様子。それが本当に羨ましい。自分の場合は、藤澤清造と現実世界において会うことは、どうやっても叶わぬことなのだ。だが自分は、そうした軍団のかたたちの“師匠“の前で、とんでもないミスを犯してしまった。四時を過ぎた頃だろうか、極度の緊張を経て、かつ、連用していた痛み止めと急ピッチで大量摂取した焼酎とのブレンド作用で、意識を失うみたいにして、二度程たけし氏の目の前で居眠りをこいてしまった。そして更には、二度目にハッと目が覚めたとき、こらえきれない吐き気がこみ上げてしまい、たけし氏の前でゲエッと派手にえずいて、すぐと何とか飲み込んだものの、間髪いれずにせり上がってきた第二波は到底持ちこたえられず、口を押えてトイレに駆け込むと云う醜態(吐いたわけではないが)を晒してしまったのである。その瞬間、自分は軍団のかたからフクロにされることを覚悟した。“殿“の御前での、この重ねての粗相である。が、たけし氏も軍団のかたたちも全く怒らず、引き続きの同席を許して下すったのには、本当に救われる思いがした。朝の六時になって解散となり、まだ薄暗い六本木通りにたけし氏のロールスロイスが廻されて一同でお見送りをしていた際、いったん車内に消えた氏は、またすぐと降りてきて、『これ、あげるよ』と、革ジャンを自分に渡して下さる。」  角