2021年9月27日(月)  角幡唯介  『アグルーカの行方 129人全員死亡、フランクリン隊が見た北極』を読む  

 

 北極探検の物語。探検家・角幡唯介と北極ばかりを旅している「北極バカ」荻田泰永が、19世紀半ば、北極の地で全滅したジョン・フランクリンが率いた探検隊の足跡を辿って極北の地を旅していく痛快な冒険物語である。白い雪原が広がる北極の地を巨大氷の乱氷帯を苦労して乗り越えたり、巨大な北極熊と遭遇したり、大型の草食動物の麝香牛を撃ち殺して空腹を満たしたりする。そして、不毛地帯に入ってからは氷が張った川や湖と格闘しながらボートや徒歩で渡ったり、巨大なレイクトラウトを釣り上げて3日間かけて食べるといったようなワイルドなエピソードが満載なのだ。そして、風景描写にも秀逸さが感じられる。その一部を抜粋しておく。「川に到達する手前で息をのむような美しい光景に出会った。氷の解けた湖が深く水をたたえ、青い水面が風に波打っていた。昇ったばかりの朝陽を浴びて、周りの雪面が赤く輝き、周囲には鮮やかな緑の絨毯が広がっていた。湖は下流で優しいせせらぎとなり、爽やかにグレートフィッシュ川に注ぎこんでいた。」 

 ハラハラドキドキ、手に汗を握る冒険譚です。おすすめします。

集英社文庫 780円+税

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